【用語】前半戦のトレンドワード、ポーパシングをおさらい 2023年のレギュレーションは??
2022年のF1シーズンも早くも13戦を消化し、サマーブレイクに突入しました。
ドライバー達はみんな、それぞれのバカンスに向かって鋭気を養ったり、契約交渉に臨んでいることと思う。
今年の前半戦でのトレンドとなったワードといえば、
やはり、グラウンドエフェクトカーになったことによるマシンの上下運動のポーパシングではないでしょうか?
(porpoise=ネズミイルカ:海面に沿って上下に泳ぐ姿が由来)
どのチームもポーパシングによっての車体の上下の動きに大なり小なり手を焼き、"対策や軽減する方法"について追われていました。
今回はその"ポーパシング"について、どのようなものか、ざっくりとおさらいしてみようかと思います!!
ダウンフォースを得る仕組み
ポーパシングの話に入る前にグラウンドエフェクトカーがダウンフォースを発生させる仕組みについて先に少しおさらい。
現行のグラウンドエフェクトカーは、
マシンのフロアの下に大量の流れの速い空気を取り入れます。
そして、その取り入れた空気がより速く後ろに抜けるように、マシン後方下部に取り付けられたディフューザー(整流板)をとおって、高速で後ろに処理されていきます。
台風のニュースを見ると分かるように、大量の空気が速い速度で動いている場所は、気圧が低くなります。
したがって、
マシンの下部は気圧が低い状態になります。
逆に、高い気圧というのは、気圧が低いところに行こうとします。
なので、マシン上部の気圧の高い空気は、マシン下部の気圧の低い方に下がろうとするので、それが車体を路面に押し付ける力=ダウンフォースとなるのです。
2021年までのマシンもフロア下の気流でダウンフォースは発生させていたので、広義ではグラウンドエフェクトカーなんですね!
それが今年からは、
マシン外観についていたさまざまな空力パーツを外し乱流を抑えることで接近戦を可能にし、
変わりのダウンフォースをフロア下でしっかり稼ぐ!
というのが今年からのグラウンドエフェクトのマシンコンセプトになったのです!
ダウンフォースを得る、失うの繰り返しでポーパシングが起きる
各チームとも、フロア下でのダウンフォースをしっかり得るために、出来る限り車高を下げることを試みます。
そして、ポーパシングは基本的にダウンフォースを得る、失うという工程の繰り返しで起きます。
①ダウンフォースを得る
マシンが走行を始めると、大量の空気を取り入れてダウンフォースが発生して車体が地面に押しつけられることで、更にフロアは地面に接近します。そして、更に更に強烈なダウンフォースを得ます。
②ダウンフォースを失う
一度、車高が極限まで下がると今度は、
フロアと地面の幅が狭くなりすぎて、空気の流れが滞ってしまいます。
一度に流れることが出来る空気量にも限界がある為、"これ以上は通れないよー"という状態になるんですね。
そして、滞ってしまった空気はマシンの横(フロアエッジ)へと漏れていきます。
そうすると、一時的にフロア下を流れる空気が減ってしまい気圧は高くなりダウンフォース量が減って車高が高くなります。
この①と②のダウンフォースを得る、失うを繰り返すことで車高が上下し激しいポーパシングが起こるわけです!
この一連の流れの中で路面の凹凸によって更に車高が変化すると、ダウンフォースを得る量と失う量の幅が大きくなり、より多くのポーパシングになります。
路面の凹凸の影響は今年の"特に"前半でメルセデスのマシン"w13"が激しいポーパシングが起きている中、比較的路面がフラットなコースでは、それが少なく安定していたことからも分かるかと思います。
よく一緒に使われる言葉にバウンシングがあります。
空気の流れの影響で車体が跳ねること全体をそう呼んだり(一般的に言われるポーパシングと同義)、
"ポーパシング現象(ダウンフォースの得失)が原因で車がバウンスする"(車体が上下する)というように、あくまで原因と症状の関係の言葉である、とする場合もあります。
グラウンドエフェクトの弊害であるポーパシング、でもそれが多いってことは?
ゼロサイドポットを採用し、空気をより後方へ流そうして生み出されたメルセデスのマシンは当初、最もポーパシングに悩まされていました。
両ドライバーとも身体への影響を訴え、アゼルバイジャンGPのゴール直後には背中の痛みによってハミルトンがすぐにマシンを降りられないほどでした。
しかし、ポーパシングが激しいということは、それだけマシンが得る絶対的なダウンフォース量は多いということ。
同じくストレートでのポーパシングが多いフェラーリは中高速のコーナーで圧倒的な速さを見せています。
メルセデスの場合はよりポーパシングが発生する速度がより低速で出始めていた(250km/h前後)ことからフェラーリのような安定感がなかったんですね。
そんなメルセデスのマシンもポーパシングが徐々に減ってきて解消されつつあります。
もしこれから、完全に解消することができて、
現在ネックになっている直線スピードの遅さを取り戻すような空力効率を得た時、
それは再びメルセデスの時代が始まる、、、、
やもしれません。
が、2023年のレギュレーション調整が行われると、
それはいかに。
2023年のレギュレーションはどうなる?
2023年のレギュレーションでは、
ダウンフォース量が大きく変化する危険性、ポーパシングによるドライバーの身体への影響を抑えることを主な目的としたレギュレーションの調整が行われようとしています。
よりポーパシングによって厳しい戦いを強いられたメルセデスによる政治的な動きが関係しているということもあるでしょうが、
実際の調整内容が彼らに有利に働くか無理に働くかは分かりません。
検討されている調整の内容は、
マシンのフロアエッジ(車体フロアの1番横端)の高さを25mm引き上げ、キックポイント(フロアとディフューザーの境目)の高さも上げることでダウンフォースを削減する。
フロアエッジを引き上げると、今度はフロアをたわませることによって高さを下げようとする可能性がある為、たわみテストを厳格に実施。
更にバウンシングの量をセンサーによって、モニタリングする、
というのが現在検討されている内容になっています!
レッドブルをはじめとしたポーパシングを比較的うまく対処していたチームはこの調整には否定的。
まぁ、上手くやったのにそれが台無しになるテコ入れをよく思わないのは当然ですが、
安全上の理由と言われると仕方ない。
安全上の理由なら、、、、ね
この変更によりダウンフォースが削減されるわけですが、
ルールの抜け穴を利用して、ダウンフォースを取り戻す為の奇抜なデザインが登場することを危惧している者もいます。
確かに、博士のような者たちが知恵を絞ってマシンがデザインされるわけですらねぇ。
すぐに同等のものか、はたまたそれ以上のダウンフォースを生み出す変態デザインのマシンが登場する可能性はありそうです!
まだ、検討されている変更内容はチームの合意が必要なのでまだ確定されていませんが、今後どのように調整がなされるか、様子を伺いましょう!